第2回 紙の表と裏・その違い

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紙の表と裏・その違い

洋紙の表と裏の基準は、抄造過程でワイヤーに接した面か否かで決まります。

洋紙は、ワイヤー(合成樹脂の網)に接した面を裏とします。片面にツヤをつけたり手を加えてある場合は、ワイヤー面に関係なくツヤのあるほうを表とするよう商習慣上なっています。

和紙は、簀に接したほうを表(使い方は別にして)としており、洋紙とは逆になります。

 

技術の進歩

 

表裏の差をなくすことを目的の一つとした、新しい抄紙機が活躍しています。従来の水平型にたいし、主に縦型に設計された抄紙機のことで「ツインワイヤー」と称しています。この抄紙機は2枚のワイヤー間に噴出された紙料を、サンドイッチ状にはさんで脱水し、紙層を作ります。この画期的な製法の出現により、紙の表裏の差はぐっと縮まり品質が一段と向上するようになりました。

この製法による紙は、ワイヤーに接した面を裏とする基準から見ると両面とも裏となりますが、表裏差を基本的に解消しているので両方表ともいえます。しかし、長いあいだの習慣で紙の表裏を区別するならば、ドライヤー側のワイヤーに接した方を裏とします。つまり、紙の進行方向の下側になる面が裏となります。ツインワイヤーの抄紙機と従来の抄紙機の話を同時進行させるとややっこしくなるので、この辺で従来の長網抄紙機に話をもどすことにします。

 

課題と現状

 

「表裏差をなくす」という課題は、抄紙技術にとって歴史的テーマのひとつです。近年技術の進歩によって表裏の差は次第に縮まりつつあります。その現れがツインワイヤーの出現ともいえましょう。ただし、このマシンはハイスピードであるため量産できる品種に限られるきらいがあります。またメーカーの設備状況もいろいろで、新聞用紙を中心に上質紙、中質紙、更紙、塗工原紙などがメインになっているというのが現状のようです。

そのようなわけで、通常は長網抄紙機が各種用紙の主体になっていますから、表裏差問題が解決されたというわけではありません。

 

表と裏のちがい

 

うまくたとえられなくて恐縮ですが、紙の表を玄関とすれば裏は勝手口というところでしょうか。

出入り(印刷・筆記)にはどちらも用をたしますが、お客さん(使用者)には玄関(表)から入って(使って)いただくのが礼儀(印刷・筆記の効果がよい)といえるでしょう。つまり裏面でも紙の役割は果たせますが、表から使った方がより効果的に活用できるということです。とくに、色上質紙などはその良い例です。

洋紙の主たる目的は、書いたり印刷したり包んだりすることにありますから、それぞれ用途に見合った仕上げが施されています。表裏差が少なくなったとはいえ、基本的には表に照準があっており、裏はそれを支える関係にあることは変わりません。

たとえば光沢、平滑などは表のほうがよいデータが出ています。しかし、商品として市場に出るにはそれぞれの規格に見合った基準値に達していなければなりません。したがって裏面でも十分使用に耐える仕上げになってはいても、表の方は活用上より効果的な内容になっている、ということがいえます。

 

表裏差ができるわけ

 

液状の紙料は、ワイヤーパートを通過する際、脱水されることによって紙層を形成します。この段階で表裏差の主な要因が発生します。つまり、ワイヤー上で多量の水が分離され紙料だけが残ります。このとき水と一緒に微細繊維やある程度の塡料・薬品が抜けおちてしまいます。一定量の脱水がおわったあとの状態、つまり、ワイヤー上の紙料の残り方や分布状態が表裏に影響することになります。

紙の層、つまりカット面を分析したデータは、灰分の歩留りが表層に高く裏側に低くなっています。灰分が多いということは、炭酸カルシウムやクレーなど塡料が多く残っている状態を示しています。塡料が多いことは平滑性が優れていることにつながります。薬品も同じ傾向にあります。こうしてワイヤー上で発生した表裏差の骨格は、最終製品になるまでほとんど変わりません。

 

補強

 

表裏差を縮小するひとつの方法としてサイズプレスがあります。紙として仕上がる直前にサイズ剤(表面強化剤)を塗布し、紙の表面に直接品質的な補強を行う方法です。原料段階で補強剤を内添するだけより、表面塗布のほうが効果的であるところから、現在はこの方法が定着しています。

塗工紙など表面加工してある紙は、原紙に表裏差があったとしても、塗工することによって表裏の変わらない仕上げになります。

 

表裏の見分け方

 

ワイヤーマークのあるほうを裏、フェルトマークのあるほうを表として見分けるのが一般的です。ワイヤーマークはこまかく、フェルトマークはそれより大きい格子状の凸凹として残ります。また、別な方法では紙の表面に斜めから光を当て、両面を見比べながらくすんでいるほうを裏と判断することもあります。

しかし、メーカーは表裏差をなくすために日夜努力していますから、実際には表裏差もだんだんと分かりにくくなってきました。分かりにくいものを無理して見分ける必要があるかともいえますが、一応見分け方を覚えておけば後々何かの役にたつこともあるでしょう。

表裏の見分け方はなかなか大変ですが、分かりやすいサンプルを使って練習しているうちに次第に目もこえてきますから、あきらめないで熟達してほしいと思います。

 

心遣い

 

最近は複写機などの普及もあって、A4B4サイズの紙がたくさん使われるようになってきました。誰でも簡単にコピーがとれます。複写機に紙さえセットしておけば、紙の表裏に関係なくコピーしてしまうのが普通でしょう。

そこで、心遣いということになるのですが、コピーは通常片面しかとらない場合が多いようです。

どうせ片面だけなら、印刷効果のよい、紙の表側を使いたいものです。頼まれたコピーが表面を利用したものであれば、もしかすると気配りが伝わるかも知れません。その甲斐があるかどうかは別問題として、いずれにしても紙の表と裏の違いを知って使われるほうが、何かとよいでしょう。

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