第18回「B4のこと」

B4判をとり上げてみました。カット判のこのサイズは、印刷物はもとより白紙のままで使用する用紙としても、なじみ深いものがあると思います。B4判で思い当たる用途に、ひとむかし前はガリ切り―謄写版印刷というのがありました。現在は、軽印刷、社内印刷、PPC複写機など、OA化にともなう多様な需要により、B4判をふくむカットサイズの用紙は順調な伸びを見せています。

昨今、B4判が日本独特のサイズであるところから、国際性のあるA4判の見直しがとりざたされています。つまり、A判が国際的にも共通する規格寸法であり、国外との書類にはA4判などが多く使用されていることを反映したものです。この件はやがて方向付けされることでしょう。その話は関係者にお願いするとして、ここではB4判そのものに的をしぼって話を進めます。

(1993年4月から、各省庁の行政文書規格はA4判に統一化されました。)

B4の規格寸法

JIS「紙加工仕上寸法」のB列4番の寸法がB4に該当し、B列4番を略してB4と言います。「ビーヨン」という呼び名も歴史を経て定着し、広く使われています。

B4判の規格寸法は「257mm×364mm」です。

B4の故事

B4判は、日本伝来の美濃判と半紙の折衷案として生まれた日本独特の寸法です。

ルーツそのものは分かりませんが、ひとつの手がかりとして『王子製紙社史・第三巻』によると、第一次世界大戦(1914年~1918年)後にきた不況対策として「中部工場製品に対し本社では窮余の一策として、ザラ半紙の製造を開始してその活路を見出そうとした」「四六判から九ッ取りの半紙を造ることになり、ここに王子製紙最初のザラ半紙ができた。これは『天龍』と命名され……」とあり、大正8年(1919年)5月のことと記されています。新聞巻取紙を平判にしたものを「ザラ紙」、それを半紙大の大きさにカットしたものを「ザラ半紙」と言いました。

B4の加工

B4判などカット判の一般品は、通常メーカーあるいは専門の加工工場で巻取紙から直接仕上げます。卸商によっては自社でカット判を加工し納品しているところもあります。この場合は専門工場のように大がかりなものではなく、平判を断截加工して納品するパターンの一種として取り扱われるようです。

本格的にB4判などをつくるにはある程度の量産を必要とし、専用の巻取紙から直接とります。そのほうが合理的かつ経済的になるからです。いまオフィスなどで使用されている社内印刷用のB4類やPPC用紙などは、こうした加工によるものといえます。

一方、卸商などが平判を加工しカット判を作るほうは小回りが効く利点があります。その場合、注文主は平判そのものを買い上げ、それを必要寸法に仕上げてもらうことになります。量的な問題はありますが、必要な数だけ購入できるのがメリットといえます。

さきほど巻取紙からとるほうが経済的と書いた件に少し書き加えると、平判はそのまま全判印刷できるようになっており、印刷後B4やB5に仕上げて完成品とします。つまり平判には化粧裁ちできる余白が含まれているので、最初からB4などを取ると余白部分が不用になり、専用巻取紙に比べると不経済になるという意味です。

余白とは

平判の印刷には、全紙または半截、四截で印刷する場合と、最初からB4などカットサイズになっている紙に印刷する場合とがあります。通常の印刷は前者のパターンであり、後者は軽印刷や社内印刷などのパターンになります。後者の印刷物は最初から完成品のサイズに印刷されるのに対し、前者の場合は、印刷後化粧裁ちして完成品に仕上げるため余白を必要としています。

また、印刷には印刷機に紙を引き込むためのツメがかかる部分を必要とします。その部分は、印刷面以外にないと印刷に支障をきたします。紙の先頭のツメがかかる部分を「くわえ」といい、最後部分を「くわえ尻」といいます。

印刷には化粧裁ちやくわえなど、一定の余裕を必要とします。この余裕にあたる部分が余白の用途です。辞書では、余白とは「文字など何も書いていない白い部分」となっていますが、実際に印刷する場合、美術印刷の例では印刷仕上げ面積より広めに印刷し、化粧裁ちして必要部分を残します。余白は化粧裁ちでカットされる部分になります。

JISで「余白」にあたる部分をみてみると、原紙寸法は紙加工仕上げ寸法よりひとまわり大きくなっています。その差が余白部分です。

B4類似品・断截による特別仕立て

平判を注文寸法に仕上げて納めるのは、主として卸商の守備範囲になりますが、その中でB4判に関係するところをいくつか挙げてみました。

八截(八ッ取り・8面取り)

B判または四六判から8面とる方法で、仕上寸法は任意ですが、いく通りかのサイズがあります。

たとえば、270mm×390mmはそのひとつです。これは余白部分を製品に加えたもので、印刷後化粧裁ちできる寸法に仕上げてあります。もちろん、通常のB4もとれます。

九截(九ッ取り・9面取り)

同じくB判や四六判から9面取ります。このサイズの特徴は、全紙からB4を8面取るべきところ、少し小さめながら9つ取ることによって、経済性を追求したものです。用途としてはB4の代用品になりますが、正式な寸法を必要とする場合には不向きです。寸法例に「252mm×358mm」があります。

B4判に関連したことを書きましたが、このことはA4判にも同じことがいえます。紙の有効活用の一助になればと思います。

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