「洋紙と用紙」第24回「本に適した紙」(その1)

このように開いたままで置けるのも、書籍用紙がしなやかだからです。

このように開いたままで置けるのも、書籍用紙がしなやかだからです。

本に適した紙(その1)

B6判、四六判、新書判、文庫本など、本の本文に使われる紙を中心に話を進めます。

本屋さんで良い本に出会うのは楽しいものです。本を買う時の理由にはいろいろあると思いますが、内容、著者、タイトル、装丁、厚さ、ページ数、定価などは当然加味されていることでしょう。ところで、紙質の方はいかがでしょうか。本が読みやすく仕上がって、買いたくなる要素の何分の一かは、紙も素材として協力させてもらっています。

本はどんな紙でもよいというわけにはいきません。本に適している紙には、どのようなことが必要なのかをあげてみました。

 紙に求められる条件

本文の紙は、読みやすさをバックアップする要素が求められます。

求められる条件としては、色相、ほどよい光沢、ページめくりが良い、製本しておさまりが良い、一定の束がある、裏透きしない、そして増し刷りに際しては安定供給できる、などがあります。もちろん、価格問題も含まれます。

紙の色としては、うすいクリーム系か白が主流です。

光沢の強い紙は、写真の多い本に適していますが、文字を中心とした場合には目が疲れるなどの理由から好まれません。文字ものには普通光沢の紙が求められます。

ページめくりを良くするには、しなやかさを必要とします。しなやかで裏透きのしない紙は、組成として不透明度を高め、紙にしなやかさをもたらす塡料である白土、あるいは炭酸カルシウムを普通の印刷用紙より多めに添加した仕上げになっている必要があります。

こうした内容を含んだ紙が、本文用紙にふさわしい風合いのある紙の条件、ということができます。

そういう条件を満たした紙

一般に「書籍用紙」、あるいはそれに類似した銘柄の紙は、だいたい出版に適した特性を持っていると考えてよいでしょう。書籍用の用紙は、紙の分類では非塗工印刷用紙のなかの上級印刷紙、あるいは中級印刷紙に入っています。とくに、上級印刷紙の「その他印刷用紙」のなかに含まれる品種が主流を占めます。

少し前までは、活版印刷適性紙も多かったのですが、現在はオフセット印刷適性紙及びオフセット・活版両用紙に座を明け渡しています。が、活版印刷適性紙も根強い人気をもっています。(注)

出版用の用紙には、汎用性のある一般品が広く用意されています。寸法にみる品揃えの中心はB判、四六判にあります。他に大手出版社などによる出版社専用の特注品もありますが、この紙は市販されません。なお、文庫判や新書判という寸法になると、出版社の特注品が圧倒的に多く、一般品は限られてきます。

注:「洋紙と用紙」が書かれた当時は、活版印刷が残っていましたが、2017年現在では活版で書籍本文を印刷することはほとんどありません。

(その2に続きます)

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