第3回 濃淡厚薄
濃淡厚薄
国語のようなテーマですが、紙にもよく使われる字句なので取り上げてみました。
洋紙の関係で「淡」あるいは「薄」という字がよく出てきます。両方とも「うす」いと読み、前者は色に、後者は厚みに主としてあてられています。文字を見れば分かりやすいのですが、電話など音声の場合は、前後関係をよく判断しないと意味を間違えることがあります。
濃淡
洋紙には着色した製品たくさんあり、それぞれ色に名前がつけられています。同色系では「濃」「淡」という字を使って、よくわかりやすく区分しているものもあります。たとえば、色上質紙のクリーム系には同じクリームでも濃淡があり、濃いほうを「濃クリーム」と書いて「こいクリーム」、うすい色のクリームを単に「クリーム」と称しています。書籍用紙で、「淡クリーム」と書いてあるは、「うすクリーム」と読むように使われています。色上質紙の「黄」色はクリームと異なります。
色をあらわす場合、「薄」でも良さそうなものですが、洋紙ではだいたい「淡」の字を当てており、まれに「薄」が使われています。
厚薄
紙を二分して、嵩のあるほうを「厚い」といい、ないほうを「薄い」としています。
そもそも紙は、「紙一重」などと薄いもののたとえによく使われるように、全体として薄いものです。それだけに、わずかな差でも使用上では大きな意味をもち、その差異によって用途も変わってきます。使用に際し紙の厚みをミクロンの単位まで測定するのは、こうした僅少差をさまざまな角度から検討し、より有効に活用しようとする意味があるからです。
厚みについて
1枚の紙の「厚さ」
用途によっては、1枚の紙の厚さを正確に知らなければならない場合があります。しかし、紙の厚みは包装紙などにいちいち書いてないため、実測あるいはメーカーが添付または発行したデータを使用することになります。実測する場合、正確なデータを求めるにはマイクロメーターを使いますが、通常はピーコックに頼ります。
メーカーが発行している折見本などサンプルには、厚さを表示し選択しやすくしてあるものもあります。その場合の記載例には、許容範囲として標準値に「±」(プラスマイナス)の数値をつけていることがあります。「±」をつけている理由としては、メーカーではJISにもとづいてデータを測定しますが、ある程度の差異はどうしても含まれるからです。
このように微妙な性質を持つ紙は、綴じもののように何枚も重ねて使用する用途では、それに必要なデータを1枚の紙の厚さから確定するには困難があります。つまり、紙と紙の間に生じる空隙を考慮しなければならないからです。このように、均一なようで微妙な差を持つ紙の厚みを数値でおさえるには、何枚かの紙を重ねて測り、それを値とするのが一番誤差が少ない方法とされています。
連量表示と紙の厚さの関連性
通常、紙の重さを比較するには連量が主に使われますが品種によっては「連量」のかわりに「厚」「薄」表示を使うこともあります。
連量は、紙の重量を表すと同時に厚みの目安ともなっています。ただし、コート紙と上質紙の同一連量を比べた場合、同じ厚さとはなりません。品種によって仕様が異なるため厚さも変わってくるからです。そこのところは実測による確認が必要です。
一方「厚薄」の表示方法を用いている品種としては、色上質紙にその例を見ることができます。
たとえば、色上質紙は連量のかわりに、特薄口・薄口・中厚口・厚口・特厚口・最厚口・超厚口と「厚薄」を使って7ランクに分けています。
問題は「厚口」「薄口」の意味合いです。洋紙自体が薄いものですが、それをさらに厚い、薄いと分けるのは僅少差をより細分化しているもので、1銘柄に7種類の重さがあれば色上質紙のように7ランクに、3種類であれば3ランクに区分されます。
したがって、連量と厚さの関連性からくる留意点としては、同一品種の場合、①連量が大きくなるほど紙も厚くなること、②一度実測しておくと「厚口」という表示だけで紙厚に見当をつけることができること、③品種が異なった場合は、同じ「厚口」とか<90>(1000枚90㎏)と表示されていても同じ厚さにはならない、などをあげることができます。