第8回「紙にも『目』があります」

紙にも「目」があります

紙には、書く、印刷する、包むなどの用途がありますが、切るにしても折るにしても、紙の性質を知っているのといないのとでは違いがでます。紙はデリケートで、かつ、強情な性質をもっています。その性質に逆らうと「横紙破り」ということになり、うまく使いこなせないこともあります。性質のひとつである紙の「目」を取り上げてみました。

 

繊維の流れと紙の「目」

 

紙を構成する繊維の向きを「流れ」または「目」といいます。紙の目は構造的なもので、表面から見ただけでは分かりにくいものです。

目は、抄造工程のワイヤーパートで、紙料から水が濾され紙層を形成する過程で発生します。ワイヤー上の紙料は、進行方向に引っぱられながら脱水されます。そのとき、繊維の多くは行列したように並びながら結合し、その形跡を性質として紙に残します。それが目となります。このように、ワイヤー上で繊維が流れの方向に並ぶことを「繊維配列」といいます。

 

繊維の流れと紙の性質

 

繊維の結合のしかたは紙の性質に大きな影響を与えます。

繊維の結合状態をあらわす用語に「地合」があります。地合とは、繊維の絡み合いの状態をいい、地合の良い紙とは、繊維が均一に絡み合っており、強さがあって印刷しやすい状態に仕上がった紙をさします。逆に地合の悪い紙とは、繊維の絡み合いが均一でない状態、つまり繊維の絡み合いに偏りがあり、結果として結合が弱くアンバランスな状態をいいます。地合が悪いと、地合のよい紙に比べて裂けやすく、また紙クセがつきやすく印刷しにくい紙となります。もちろん、それほど品質の劣った紙は市場に出ることはありませんが、このように繊維結合の良否は紙の生命にかかわるものとなっています。

目と紙の性質は、1枚の紙を縦方向と横方向に裂いてみるとよく分かります。片方はわりあいまっすぐに裂け、もう一方はなかなかいうことをきいてくれません。紙は繊維の流れ、つまり目にそっては裂けやすく、その逆は裂けにくいという性質をあらわしているからです。繊維の川を、流れに沿って進むのと流れを横切る違いで、横断するには繊維を1本1本断ち切って進むか、よけながら進むということになるからです。なお、紙層を形成している繊維の結合状態は、1本1本に枝が生えたように加工された繊維が、その枝と枝とが物理的にしっかり絡み合うことによって成り立っています。また化学的には、その繊維が水を媒体とし「水素結合」によって、さらにしっかりとした結合状態をつくり出していることも重要な要素となっています。こうした性質を知ることは、紙にたいしてさまざまな働きかけをするうえで、大切な出発点ともいえます。

 

目の作用

 

紙を折る時、目にそってはピシッと上がりますが、逆の場合は折り目が凸凹してきれいに仕上がりません。薄い紙ではあまり問題になりませんが、厚みを増すほどこの傾向は顕著に現れます。

折り目は、紙を取り扱ううえでおろそかにできない問題です。本や雑誌の目は必ず天地に流れるようにつくられています。目に逆らうと本文が丸まったり、そろわなかったりします。また、表紙に逆目をつかうと本文とそぐわないだけでなく、反発力が作用し丸まってみっともない本に仕上がってしまいます。

紙細工はこの性質を上手につかっています。印刷も目を大事な基準にしています。このように、紙の目は決しておろそかにできない性質として重視されています。

なお、繊維の流れが目と直角方向のことを「逆目」と称します。

 

目の確認

 

少し大きめで四角い紙の両端をもって、折り目の入らない程度にかるく曲げてみます。今度は、となりの辺をもって同じように曲げてみます。「目」にそっているほうはしなやかで、もう片方は反りかえりが強いはずです。強いほうが逆目で、しなやかなほうが「目」にそっているといえます。

ほかには、小さい紙片を水に浮かべてみる方法もあります。水に浮かべると、スルメを焼いたときのように一方に丸まり、やがてもとに戻ります。円筒状の方向が繊維の流れを示し、反対が逆目となります。

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