第16回「紙の見本」
紙の見本
洋紙にはたくさんの種類があります。その中から一番気に入った紙を選ぼうとするとき、最後の決め手としては、現品の折見本やミニ見本帳などに頼ることが多々あります。紙の見本は、商品を広く紹介し商いを促進するとともに、仕事を決める大切な役目を果たします。
見本の役割
たとえば、1冊の本を作るとき、用紙はいろいろな角度から検討されます。紙の見本も資料の一つとしてテーブルにのります。紙の選定には、見本の紙を使って「束見本(つかみほん)」(白紙を本にしたもの)をつくり、関係者でさらに検討を重ねます。その結果、合格であればその紙が選ばれたことになり、不合格であれば振り出しに戻ります。数点であらそった場合はほかの紙が選ばれるということもあります。
このように、紙がある用途に決まるまでのプロセスで紙の見本は大事な働きをします。見本だからと、決しておろそかにすることはできません。
紙選びによく使われる見本の種類として、現品を見るための「折見本」(白紙を折りたたんだもの)、実際に本などをつくってみる「束見本」用の紙などがあります。
印刷に関しても同様のことがいえます。
印刷物によっては、前もって色の再現性や印刷効果を確かめてみる必要があります。文字だけの印刷なら、紙とインキの関係というより校正のほうに重点が置かれるかもしれません。しかし、多色刷りとなると、紙とインキの関係で色などに微妙な変化が現れますから、試し刷りなど、事前の準備が必要となります。依頼主に確認を求める必要もあるからです。こうした場合に使う用紙を「色校正紙」といい、完成品に用いられる用紙もしくは同等の用紙が使われます。
紙見本は有料か無料かの問題
商取引がある場合、一般的な紙の見本は商品案内として用紙供給側から需要家にたいし特別でないかぎり無料で提供されます。逆に、折見本や束見本、色校正紙などは需要家が供給側に求めるケースになります。これも取引関係があれば、特別でないかぎり無料です。
有料、無料の分岐点はケースによって違うため、一概には言えません。実際に使用する量との関係も大いにありますが、一応の目安としては、常識的な限度を越えないかぎりというところでしょう。あえて枚数をあげてみると、特殊な紙では多くて2~3枚、束見本用の印刷用紙では数冊分というところでしょうか。取引にはさまざまなケースもありますから、一般的な例としておきます。なお、取引関係がない場合は、特別の事情でもないかぎり商品として扱われ、有料になるのが通例です。
見本の選定は大切な仕事
各メーカーの商品見本が、代理店や卸商から商品案内として需要家に提供される例は多々ありますが、こちらのほうは通常の内容なので省略し、見本選びに話を進めます。
紙の販売すべてに見本がいるわけではありませんが、需要家が必要とした場合、用紙供給側は見本を揃え要望に応えることになります。たとえば、需要家が新しい企画を立案したり、イメージを確定させようとする場合など、需要家は検討材料として用紙供給側に紙見本を要求することがあります。
受けた側つまり用紙供給側の対応としては、用紙供給側の責任で受諾しますが、具体的にはその需要家を担当する営業マンの仕事として紙選びがスタートすることになります。要望事項が単純明快であれば見本の選定も簡単ですが、漠然としたイメージのものや、指定範囲が広い場合はなかなか大変です。担当者としては極力要望事項を聞き出し、整理しながら希望の品を選んでいきます。それには、豊富な商品知識を必要とすることはいうまでもありません。需要家のイメージにあった商品をすみやかに、そして的確に選びだすのも営業マンの技術と言えるでしょう。
こうして選ばれた見本が依頼者の要望とマッチした場合、この話はやがて売買に結びつくことになるでしょう。紙見本は新しい企画を世に出す出発点であり、素材が完成品に生まれ変わる第一歩ともいえます。紙見本の選定は、おろそかにできない仕事とされています。