第17回「紙を判定しなければならないとき」

紙を判定しなければならないとき

「これと同じ紙がほしい」「この紙はなんという名前だろう」と聞かれることがよくあります。こういう場合の対応はなかなか大変です。それをテーマとしてみました。

紙の鑑定所はない

紙というものは、単に紙片を見せられただけでは氏素性の判断はつきにくいものです。そのようなとき、紙のサンプルを見て「この紙はこれこれこういうものです」と教えてくれる、つまり鑑定所のようなところがあったら便利だと思います。企業はサービスだけでは成り立ちませんが、そこに行けばたくさんの見本もあり無料で紙の相談にものってくれる、そういう相談所のようなところが欲しいものだと思っています。

取引関係があれば、紙販売店の営業マンが相談にのってくれます。見本も見せてもらえるでしょう。しかし、一般の消費者や学校の生徒たちが教材に見本を見たいという場合、いまのところ見本を見ること自体なかなか大変です。

近年、洋紙は素材という面をもちながらもだんだんと大衆化しつつありますから、個人的にも気楽に立ち寄って調べごとができるようなところがあったら便利だと思います。そうなったら、案外プロのほうが有効利用することになるかもしれませんが。

紙そのものに詳しくなる

紙を調べることについて他人の力を借りるわけにはいかない場合、ある程度自分自身で鑑定力をつけざるを得ません。また、他人に相談するにもそれなりの知識がないと話は進みません。

紙そのものをよく知るには、まずたくさんのサンプルを手に取ってみることが手順です。いろいろな角度からながめたり、透かしたり、曲げてみたり、音を聞いたりというように、手ざわりや肌ざわりを通して感触的に覚え込んでしまうのが一番です。用途によっては万年筆で書いてみることもします。ボールペンで書いたのではインキのにじみの点検にはなりません。さらに、名前の分かっているサンプルに、なるべくたくさん触れることです。そうした積み重ねが後々の役にたってきます。印刷にたずさわっている人が紙の特徴や癖に詳しいのは、じかに紙と接触しているからです。

いずれにしても、たくさんの紙に触れているほうが、紙片を見せられたときなど、見当をつけるのに役立つと言えましょう。

紙の判定

このテーマである紙の氏素性を探り出すという作業ですが、実際問題これがなかなかの難作業です。特殊な紙や特徴のある紙は比較的判断しやすいのですが、一般的な印刷用紙は最後の決め手を欠き、ほぼこの紙に間違いなかろうというところに落ち着くことが多いようです。逆にいうと印刷用紙などはそれだけ汎用性があるとも言えます。

一番近い紙を探し出すには、まず大体の見当をつけ、サンプルなどと比較しながら範囲を絞ります。つぎに、類似品と一点ずつ見比べながら消去法で的を絞っていくことも方法です。計測器があればそれも使い、重さ、暑さ、白さ、色調なども調べます。手工業的ですがこのような方法が一般的のようです。場合によってはメーカーや同様な紙を取り扱っている業者に判断を依頼することもあります。紙の種類が多いことを言い訳にさせていただきますが、結果として判明することも、残念ながら探し出せないで断念することもあるというのが現状です。断念した場合どうするかは想像にお任せします。

もし、紙がなにか重大事件とかかわり、捜査の必要上現代科学の粋を使って分析すれば氏素性もはっきりするでしょうが、一般的にはそこまで厳密さを要求されることは少ないようです。

紙の判定をすることはなかなか骨のおれる仕事です。そこで話を最初に戻し「紙の鑑定所があったら便利」ということで、この項を終わります。

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