第7回「紙の保管には温度と湿度に気をつけましょう」
紙の保管には温度と湿度に気をつけましょう
温度摂氏20度±2度、湿度65%±2%。これは紙を試験する環境の標準条件です。紙の品質試験は試験専用の部屋「恒温恒湿室」でJISにもとづいておこなわれます。試料は普通の紙で4時間以上、特別な紙で24時間以上なじませ安定させます。
はじめにテスト条件をあげたのは、これが紙を保管する場合にも良い条件とされるからです。このような好条件で紙を保管するには、機械的に温度湿度をコントロールしなければなりません。最近はこうした条件をそなえた印刷所や紙倉庫がだんだんと増えて、紙を活用する環境も改善されてきました。しかし、日本のように変化しやすい気象環境下においては、温度・湿度問題は依然として気を使わなければならない課題です。
多湿・過乾
紙は水分を多く含むとよれよれになります。水分を過剰に含んだ紙に印刷すると、印刷しわなどトラブルが起きやすくなります。また、インキの転移を悪くし、印刷効果を低下させるなど良いことはありません。逆に乾燥し過ぎると、パリパリした状態となり、紙としての風合いやしなやかさを失います。静電気発生の要因にもなります。
このような状態が積層紙に現れると、紙の水分のバランスが崩れ、水分ムラができることによって、カールや波うちなど紙くせを発生させることになります。
ちょうどよい水分は通常で5~7%といわれています。それ以上でも以下でも紙の持ち味は低下します。たまたま自分のところで保管していた紙が水分問題でトラブルを起こしたとしても、保管上の諸条件が問われ、自前で苦情処理をしなければならないことになります。紙の保管は気配りのともなう大事な仕事です。
日本は年間を通して湿度の高い時期が何度かあります。紙屋泣かせの時期ともいわれるように、その期間は保管や取り扱いに特に気を配らなければなりません。うす手の紙ほど湿気の影響を受けやすいので取り扱いには注意を要します。
除湿の必要
機械的に除湿できる装置があれば一番良いのですが、なかなか条件に恵まれないのが現実です。しかし、紙を取り扱う以上必要な手立ては打たなければなりません。
また、用紙以外に身近な問題として本の保管があります。本は閉じたままなので吸湿面積が少なく、ひどく影響されることはありませんが、それでも長時間にわたってコバ口(切り口)から吸い込んだ湿気は馬鹿になりません。また、閉じたままなので湿気の放出もよくありません。大事な書類や書物の保管には通気・換気が必要です。時々目を通すのが一番でしょうが、そうもいかないときは年1回でも虫干しすると大分違うでしょう。
オフィスなどにおけるA4・B4の保管
最近はOA化にともなって、A4やB4などカット判の用紙がたくさん使われるようになりました。このような紙を取り扱う担当者の層も広がっています。
そこで保管問題ですが、整備された場所があれば問題はないのですが、案外保管場所などに苦労し、雑になってはいないでしょうか。注意すべき点としては、置き場所は、凸凹があると紙の底辺にくせがつくので平らであること。床などへの直置きは湿気を吸収するので台を敷くなど床と紙との間に空間を設けること。良い台がないときは段ボール1枚でもだいぶ違います。長期保管になるときは、時々入れ替えるか古いほうから使うなど回転させることが必要です。
湿度・温度とも適温とはいかなくても、湿気には換気をもって対処するのがとりあえず必要です。温度も、適温を基準としてあまり高からず低からずに抑えたいものです。いずれも外気は紙中水分に変化を与える要素になるからです。
また、使いかけの紙は包装紙で包み直すか、開封口をきちんと閉じておくだけでも変化を遅らせることができます。
紙は温度より湿度のほうが大きく影響しますから、とくに湿度対策は大切です。