「洋紙と用紙」第25回「本に適した紙」(その2)

本の紙とノートの紙。似ているようで、用途に合わせた専用の紙を使っています。

「本に適した紙」(その2)

その1の続きです。

書籍用紙の特徴

印刷が目的の紙

書籍用紙は、文字や写真を印刷し表現することを目的とした紙です。書くことを主眼とした紙と比べると、平滑度やサイズ度などに仕様の違いがあります。

 しなやかさ

書籍用紙の特徴のひとつに、しなやかさがあります。これにはページめくりを良くする効果があります。塡料が上質紙などに比べて多めになるほか、繊維の長さも調整されています。

色合いと管理

本は、1冊の中に何枚もの紙が集積されています。その中の1枚でも色が違っていたりするとみっともない仕上がりになり、商品価値がなくなります。

用紙供給側としては、そうした混入などをさけるため、特別な管理・気配りをしています。ロット別管理として、抄造日・抄造月ごとに在庫場所を変えているのもその一例です。

メーカーが同じように抄造すれば同一物ができそうなものですが、水の中に1%くらいしか入っていない紙料を、しかも高速で抄きあげるわけですから、工程中のわずかな変化も紙に影響することが多分にあります。多くの変化は、だいたい技術の力でカバーされていますが、それでも何十枚、何百枚と重ねて使われる書籍用紙の場合、万一を考慮してメーカーや紙販売会社は慎重な管理を行っています。

 紙の厚さが一定であること

紙の厚さが一定でないとよい本はつくれません。一定という意味は、大きい1枚紙のどこを測っても僅少差であること。また、増刷の時にも同じ条件ということです。

本をつくるとき、実際に束を測ってみます。束とは、本の厚みをいいます。まず、発行予定の本と同じ紙を使って、束見本(中身が白紙の本)をつくります。束見本を使って印刷位置や装丁、仕上がり具合などを検討します。特に、箱入りの本の場合は束見本にもとづいて箱がつくられますから、束見本に使用した紙と実際に印刷した紙の厚みが違ったりすると、本が箱に合わずつくり直しという事態になりかねません。また、本の厚みに違いがでると、表紙の印刷位置がずれてしまいます。

このように紙の厚みは、本のように重ねて使う用途にはとても重要な働きをすることから、慎重な管理が必要とされます。

 目について

書籍用紙の規格寸法には、四六判やB判が多いことは先に述べましたが、目はどうかというと、それぞれ横目が品揃えの主流になっています。つまり、四六判やB6の本が多い関係で、それに見合った全紙が用意されているということになります。B5判の本をつくる場合は目の関係で用紙に制限があるようです。また、A列はA5判の本が多いので、A判縦目の全紙が主流になります。なお、A判横目を使うと文庫本サイズを取ることができます。新書判の全紙は、本の形が決まっており、横目だけです。

 上質紙と比較して

本には普通の上質紙を本文にしているものもたくさんあります。それならなぜ、書籍適性紙が必要かとなるわけですが、一例をページめくりでみると、上質紙は硬めであり、書籍用紙はしなやかであること、書籍用紙が本を出版するための用紙であるのに対し、上質紙はたくさんの用途の一つとして出版もでき、また、在庫も豊富であるという汎用性をあげることができます。上質紙は、紙が硬めでしっかりしているというところから、大きめの判の出版物にはよく利用されています。

なお、中性紙が開発されて以降、書籍用紙の中性紙への移行は進んでいます。

(この項終わり)

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